研究概要 |
目的:小児の気管支喘息患者の大多数はダニ(Dermatophagoides farinae,Df)抗原に感作されている。患者リンパ球においてはDf抗原刺激にてinterferon-γ(IFN-γ)産生が低下し、interleukin 4(IL-4)産生が亢進する。一方、症状のみられなくなった寛解者においてはヘルパーT(Th)細胞のインバランスが変化し、IFN-γ産生の亢進がみられ、IL-4産生の亢進は消失する。今回、寛解患者リンパ球と健康者リンパ球のサイトカイン産生をクローンレベルで解析し、Th細胞のサブタイプを決定した。 方法:末梢血リンパ球をDf抗原で反復刺激し、限界希釈法にてT細胞クローン(T cell clone,TCC)を得た。得られたTCCを自己抗原提示細胞とDf抗原で刺激し、48時間後の培養上清中のIFN-γ及びIL-4を酵素抗体法にて測定した。 結果:寛解析リンパ球から比較的高頻度(5〜10%)にDf特異的TCCが得られたが、健康者リンパ球においてはその頻度が低かった(1〜2%)。寛解患者由来TCCは健康者由来TCCに比較し、IL-4のみを産生するもの(Th2)が多く、IL-4と同時にIFN-γを大量に産生するもの(Th0)も認められた。 考察:気管支喘息寛解者においては、臨床症状が殆ど認められず、一見健康者と差がないように見えるが、リンパ球のクローンレベルでは、DF特異的TCCの頻度は高く、アレルギー疾患を増悪させうるTh2細胞が依然として多く存在し、少数のIFN-γを大量に産生するTh0細胞により免疫系が調節され、症状が抑制されている可能性が示唆された。これらのTリンパ球のクローンを重症複合免疫不全のマウス(SCIDマウス)に移入し、喘息症状の変化を観察することにより、寛解・治癒・再発などの臨床的に重要な問題点の病態解明が可能になると考えられる。
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