各種成長因子が神経系幹細胞の細胞分裂動態に及ぼす影響を検討するため、平成9年度に大脳皮質の組織培養法を確立した。すなわち胎生13日のマウスの大脳半球より、先端を鋭利にしたガラス製毛細管を用いて大脳壁をパンチアウトし、コラーゲン中でDMEMを用いて培養した。BUdRによるcumulative labelingの結果、Gl期の長さは6.3-8.3時間、Growth Fractionは0.73という結果を得た。 平成10年度には、脳の発生において特に重要な役割を果たしていると考えられるβFGFの細胞周期に及ぼす影響を検討した。また、Gap Junctionの阻害剤である1-Octanol(OCT)を培養液中に加え、分裂動態に及ぼす影響を検討した。これはGap Junctionが分裂上皮の幹細胞同士を結合、細胞周期のレギュレーションに重要な役割を果たしているという知見に基づくものである。また、すべての実験を大脳外側(Area40に相当)でも行い、発生段階の違い(外側が内側に比して約24時間先行)とFGF、OCTの作用の関係について検討した。 すべての系においてGrowth Fraction(GF)がin vivoの1.0という値に比して明らかに低いのは、おそらくQ Fractionの細胞が脳室層内に留まっているためと考えられる(平成9年度実績)。したがってArea40におけるFGF、OctanolによるGFの更なる低下は、Q Fractionの増加(分化の誘導)を反映していると考えられる。一方、Gl期の長さに関しては、Area1、Area40ともにFGF、Octともに効果は認められなかった。今後は、分化が進行した部位(Area40)におけるFGFのQ Fractionに及ぼす影響について、検討を進める予定である。
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