研究概要 |
川崎病発症に従来のスーパー抗原の概念とは異なった,病因抗原と患児のリンパ球との極めて特異的な免疫応答に基づくものが関与する可能性を考えて,川崎病患児小腸粘膜より分離した細菌群(好気性菌,嫌気性菌)を液体培地にて37℃,24時間培養し,その培養上清を同一患児のγ-グロブリン投与前の急性期末梢血より血清を分離・保存後,比重遠沈法にて分離されたリンパ球に加え,37℃,5%CO2インキュベーターにて72時間培養し,^3H-thymidineを用いてmitogen活性を測定した.その際,mediaのみをnegative control,抗CD3抗体を加えたものをpositive controlとして,negative controlより5倍以上のmitogen活性の上昇したものを陽性とみなした.現在までに検討した川崎病10例(3か月ー4歳、平均2.6歳、男:女=6:4)中9例の小腸粘膜より好気性菌,嫌気性菌共に2-6種類が検出された.検出されなかった1例は当初,化膿性リンパ節炎と診断され早期より大量の抗生剤を投与されていた症例であった.小腸内細菌群の検出された9例中8例より同一患児の末梢血リンパ球に明らかなmitogen活性をもたらす好気性菌もしくは嫌気性菌が少なくとも1種類以上検出された.mitogen活性をもたらす菌が証明されなかった1例では,末梢血サンプルの保存状態が不良であったため,検討に十分なリンパ球数が得られなかった.γ-グロブリン投与前の急性期末梢血リンパ球にmitogen活性をもたらす細菌が証明された8例について,γ-グロブリン投与後の末梢血リンパ球についても同様の検討を行ったが,上述のmitogen活性は全例で消失していた.また,age-matchした正常対照児や健康成人のリンパ球は,これら培養上清に対して何ら反応を認めなかった。
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