研究概要 |
目的 代表的ω-3多価不飽和脂肪酸の一つであるエイコサペンタエン酸(EPA)の抗アレルギー作用を培養マスト細胞を用いて検討する。 ヒト臍帯血中の単核球をSTEM FACTOR(AMGEN,CA,USA),IL-6、およびプロスタグランディンE2の存在下で培養して得られるマスト細胞を用いた。 方法 EPAをエチルエステル(Nissui,Tokyo)を10mMのエタノールに溶解し、培養液に加え最終濃度を1μMとした。20時間後にマスト細胞を集め、洗浄し以後の実験を行った。Cyclooxygenase-2 inhibitorであるNS-398を10mMのDMSOに溶解し、最終濃度を10μMとして感作の50分後に添加した。 PGD2,PGD3は質量分析計にてselected ion monitering(SIM)により測定した。 結果 (1)ヒスタミン遊離ついてはいずれの群の間に有意差は見られなかった。 (2)EPAの添加によりPGD2の産生は56%減少した。EPA添加群は非添加群に比べて著しくPGD2の産生は低下し、NS398を追加した群ではさらにPGD2産生は低下した。 (3)上述の実験をcell freeの系について検討した。その結果EPAは細胞内に取り込まれたものがCyclooxygenase-2を阻害してPGD2の産生を抑制するものと考えられた。 考察 これらの結果はヒト培養マスト細胞をEPAで処理しておくと,COX-2の関与する代謝経路に作用し、その結果PGD2産生が低下すると考えられる。換言すれば内因性のEPAが抗アレルギー性炎症作用を有すると言えよう。
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