研究概要 |
ヒト臍帯血単核球を、幹細胞因子(Stem Cell Factor,SCE;C-kit リガンド)、IL-6、PGE2、子牛胎児血清で培養し、肥満細胞を誘導する事が可能となった。 この細胞を用いてヒトのアレルギー反応における肥満細胞の役割を解析することを目的とし、ヒト・ミエローマlgE-抗ヒトlgE抗体による実験系を作り、試験管内でヒスタミン・プロスタグランディンD2(PGD2)の産生・遊離をみてきた. 本研究費補助金の援助を受け、多価不飽和脂肪酸(とりわけ栄養食品として注目されるエイコサペンタエン酸[EPA]やジホモリノレン酸[DHA])の肥満細胞に対する作用を解析した結果、培養肥満細胞に取り込まれたEPAやDHAは、ヒスタミンの遊離には影響を与えず、リピッドメディエータであるPGD2産生を抑制し、特にEPA取り込みでは、アレルギー刺激に誘導されて発現しPGD2産生に関わるとされるサイクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の関与するPGD2産生を効率よく抑制すること、そしてEPAはCOXに代謝されてPGD3になることが、が判った。このことから細胞に取り込まれたEPAはCOX-2が主に分布する細胞内の核周辺の膜構造まで運ばれ、直接アラキドン酸と競合することで、PGD2産生を抑制することが示唆された。これは臨床面で言われるEPAの抗炎症作用の直接の証明となりうると考えられた。 一方、遅発反応における肥満細胞の働きについて検討を行い、実験に用いた培養肥満細胞をlgE-抗lgEで刺激し、6〜8時間後に遊離するサイトカイン類を調べた結果、IL-8及びIL-5について変化が認められたが、IL-4,IL-12,RANTHES,MIP-1αなどは検出できなかった。
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