この数年来報告されているヒト培養マスト細胞を用いて、多価不飽和脂肪酸の中の特にω-3(n-3)多価不飽和脂肪酸の抗アレルギー性炎症反応について検討した。ω-3(n-3)多価不飽和脂肪酸のなかにはアルファリノレン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸などがあるが今回はエイコサペンタエン酸を中心に検討したこのω-3(n-3)多価不飽和脂肪酸とω-6(n-6)多価不飽和脂肪酸の食物中の比率は栄養学的に意味がありこのバランスが崩れると心血管系の疾患(心筋梗塞)、リュウマチ系の疾患が増加することが知られていた。近年このω-3(n-3)多価不飽和脂肪酸の抗アレルギー性炎症が注目されるようになった。 我々はこの点について主にプロスタグランディンD2について検討した。その結果、エイコサペンタエン酸は細胞内にとりこまれ、プロスタグランディンの誘導酵素であるサイクロオキシゲナーゼ2(COX-2)を阻害しプロスタグランディンD2の産生を抑制し、一方、プロスタグランディンD3を誘導した。しかしながらヒスタミンの遊離については全く関与しなかった。気管支喘息患者に対する抗原吸入誘発テストではエイコサペンタエン酸は即時型反応には効果が見られず遅発型反応のみに抑制効果を示すという報告がある。今回の我々の結果はこの現象の説明の一つとなると言えよう。
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