ガラクトース血症は放置すると肝機能異常、白内障、敗血症、精神運動発達遅滞などが出現する疾患として知られ、わが国の新生児マススクリーニングの対象疾患にもなっている。 筆者らはウレアーゼ処理尿をGC/MS分析するスクリーニング法を開発し、新生児5生日尿中の有機酸、アミノ酸、糖類の分析からアミノ酸、有機酸、糖代謝異常症を効率的に化学診断する新生児マススクリーニングを行っているが、特にガラクトースの異常排泄者の頻度が高く、ガラクトース血症のヘテロ検索の可能性を探るため研究を進めている。 これまでに4540検体の新生児尿を分析し、基準値(平均値+3SD)を超えたガラクトース高排泄の患者は89例(約2%)であった。このうち早産、低体重出生児の占める割合は38例43%で、特に対象児の臓器発達未熟性だけを原因とすることは出来ない。5生日児のガラクトース平均排泄量は1.63±1.11mg/mg creatinineであったが、ガラクトース高排泄児では5.04〜40.27mgで、我々が以前経験したガラクトース値症I型患者におけるガラクトースの排泄量は48.92mgであった。基準値の2倍(約10mg)を超えた患者は22例でこれらの中での早産、低体重出生児の占める割合は10例45%で特に変化はない。 新生児ガラストース高排泄児では、ガラクトース血症患者で常に見られるガラクチトールやガラクトン酸の同時排泄増加は認められず、ガラクトース血症とは化学診断出来ない。しかしながら、ガラクトースの排泄量はガラクトース血症患者量に匹敵する患児も10例近くあり、臨床症状はまだ出ていない事からヘテロ患者である可能性も残されている。即ち、その異常はヘテロ患者における酵素熟成遅延と乳糖のオーバーロードに関連した可能性も考えられる。
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