(1) ウレアーゼ処理尿GC/MS分析法は尿中有機酸、アミノ酸、糖などの同時検索が可能で種々代謝異常症の鑑別化学診断には最適の分析法である。昨年度の研究で新生児高ガラクトース尿検体が多数認められたため、今年度はガラクトース排泄と新生児の肝、腎の未熟性を比較検討した。 (2) ガラクトース血症I型とII型の鑑別診断には肝機能障害の有無で尿中ガラクチトール分析と共に4-ヒドロキシフェニル乳酸の検索も鑑別診断に利用できる。 日本人に多いとされているIII型の残存酵素活性が34%の部分欠損患者の1カ月尿分析ではガラクトースの異常排泄は+12SDを示した。このことより新生児で+10SDを越えた検体は部分欠損やヘテロの可能性を示唆するものであった。検索した4338検体中ガラクトースのみが+10SDを越えた検体は15検体であった。 (3) GC/MSで異常判定した検体は新生児マススクリーニングで血中ガラクトース値の異常は指摘されていないが、血中ガラクトース値が異常判定カットオフ値以下の5.2mg/dl(コントロールは2.0mg/dl以下)であった新生児の18生日尿を分析したところ、尿中のガラクトース値は22.8mg/mg creatinineと+25SD値を示した。即ち異常排泄増加検体では血中ガラクトースがカットオフ値に近い値を示していた検体であることが推測された。 (4) 新生児では完全欠損患者でなくとも部分欠損患者やヘテロ患者ではガラクトース代謝能低下が強く現われ、血中ガラクトースの僅かな上昇が起こり、ガラクトースの尿中排泄増加が起こると考えられる。単に腎・機能の未発達が原因であればアミノ酸などの排泄増加を伴う筈であるが、ガラクトース高排泄児ではそれらの同時排泄増加は認められなかった。尿中ガラクトース検索により血液よりもより鋭敏な部分欠損患者あるいはヘテロ患者の検索が可能と考える。
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