研究概要 |
1.対象および方法;当科アレルギー外来通院中のアトピー性皮膚炎20例を対象に、食物抗原負荷試験を施行し、同意を得られた患児の末梢血リンパ球を用いた。比重遠心法で得られた末梢血リンパ球を食餌抗原であるovalbumin(OA)とともに培養。細胞内DNAを蛍光色素propidium iodideで染色し、フローサイトメーター(FACScan)で蛍光強度を測定することより、増殖中のS期細胞の比率を求めた。解析は、OA添加培養のS期細胞の比率をOA非添加培養のS期細胞の比率で除したS.I.F.(Stimulation Index by Flow cytometory)で表した。 2.結果;time courseの検討では、培養4日にS期細胞の比率が最も高くなることが判明した。そのため、以後は培養4日目のS.I.F.値で比較検討した。年齢による検討では1歳未満で、重症度による検討では重症例で、卵白特異的IgE抗体値による検討ではスコア3以上で、S.I.F.がそれぞれ高い傾向を示したが、統計学的有意差は認められなかった。しかし、卵白負荷試験陽性12例の平均は、陰性8例に比べ有意(p=0.01)に増殖反応が認められた。 3.結論;鶏卵アレルギーのあるアトピー性皮膚炎の患児では、卵白抗原のOA刺激により末梢リンパ球は増殖反応を示すことが、フローサイトメトリーを用いた方法で測定可能であった。また、実際の食餌抗原負荷試験とも一致しており、in vitroでの食物アレルギーの診断が可能と考えられた。 以上のことより、放射性同位元素を用いず、安全に、食餌アレルギーを診断できると考えられた。 4.現在および今後の展開;細胞表面抗原を同時染色し、リンパ球のどのsubpopulationが増殖反応をしているのかフローサイトメトリーにより検討している。細胞表面抗原と核内DNAを同時染色する手法は、現在のところ細胞表面のCD3抗原の染色については確立でき、Tリンパ球であることは判明した。現在、CD4,CD8抗原についても実施中である。また、フローサイトメトリーによる細胞内サイトカインの染色も行っており、アトピー性皮膚炎におけるTh1あるいはTh2のinbalanceについて検索中である。
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