研究概要 |
RT-PCR法よりTRKAmRNA断片のサイズと発現量を解析し臨床的意味について検討した。末治療の神経芽腫60例を分析した。組織凍結標本よりAPGC法を用いてRNAを抽出し、RNA0.2μgから逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、蛍光プライマーによりPCR法を行なった。蛍光標識されたPCR産物のサイズと発現量をAppllied Biosystemsの自動DNAシークエンサーを用いて定量分析した。TRKAの発現量の範囲内は、0-428,000であった。発現量によりhigh expression;TRKA>100,000,intermediate expression;35,000<TRKA<100,000,およびlow expression;0<TRKA<35,000の3群に分けると2年生存率は、それぞれ87.5%、67.5%および20.0%であった。TRKAの発現量と予後との間には相関が認められ、ノザンブロットの結果とよく一致していた。異なるサイズのPCR産物が認められTRKAのheterogenietyとの関連が深いと考えられた。蛍光プライマーを使ったTRKAのRT-PCRは、アイソトープを使わない点で安全なうえにノザンブロットに比べ時間もかからずRNA量も1/100でよく、しかも定量性も優れているので神経芽腫の診断に有用であると考えている。また、初代培養株を用いた分化誘導実験では、進行期の神経芽腫のなかにNGFや、BDNFといったneurotrophinや、All-trans retinoic acid(ATRA)単独では反応しないが、BDNFとATRAを同時に加えると神経突起を顕著に伸長させ強力な分化誘導が起こる腫瘍が存在することが明らかとなった。特にN-myc増幅例でその傾向が認められた。
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