研究概要 |
腫瘍組織におけるtrkA転写産物のもつ2つのisoformの発現をRT-PCR法により測定する方法を確立し、神経芽腫の患者より摘出した腫瘍組織を用いてtrkA遺伝子転写産物の発現様式、組織病理、患者背景、治療成績を検討しtrkA遺伝子転写産物の生物学的意義を検討した。未治療の神経芽腫60例を分析した。TRKAの発現量は0-428,000であった。発現量によりhigh expression,intermediate expressionおよびlow expressionに分けると2年生存率はそれぞれ87.5%,67.5%および20.0%であった。TRKAの発現量と予後の間には相関が認められこれまでのノザンブロットの結果とよく一致していた。また、異なるサイズのPCR産物が認められisoformeの違いが腫瘍組織の分化度および予後との関連について検討を加えていく予定である。 1歳未満の患者に自然治癒の期待できる予後のよいと考えられるIVs期の神経芽腫のなかにTRKAの発現量が0であり、N-myc非増幅でかつDNA ploidyはdeploid typeといった予後不良因子のそろった腫瘍が存在し実際に予後が不良であるという新しい範疇にはいる神経芽腫の存在も明らかとなった。このタイプの神経芽腫は、培養株を樹立できれば、N-myc遺伝子の導入による影響や、TRKA遺伝子による細胞分化の研究に役立てることができ将来遺伝子治療や分化誘導療法のモデルとして応用可能な研究を可能にすることができると考えている。
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