研究概要 |
1)小児腎生検施工例(800例)のうち600例を対象に,糸球体病変,糸球体硬化病変,尿細管・間質病変をスコア化し,生検時検査情報,予後をともに入力してデータベース化して以下の結果を得た。2)1978〜1995年に学校検尿を契機とした腎生検を施工した229例(男児120例,女児109例,平均10.9歳)と同時期の学校検尿以外の発見動機で腎生検を施行した小中学生の153例(男児87例,女児66例,平均10.5歳)の臨床病理学的比較検討を施行した. (1)発見時病像の比較では反復性持続性血尿が学校検尿群で76%と最多で,非学校検尿群では47%であり,急性腎炎症候群,ネフローゼ症候群の比率が高い。 (2)学校検尿群での組織所見の内訳では,巣状,び慢性含めた増殖性腎炎が最も多く,両者併せて56%,ついで微小変化が34%である。膜性腎症が4%,膜性増殖性腎炎3%,巣状糸球体硬化症2.6%に認める。 (3)学校検尿例での最終診断では,IgA腎症が最も多く48%,非IgA増殖性腎炎が8.7%である。膜性腎症が1.7%,膜性増殖性腎炎が3.1%,先天奇形が3.1%,菲薄基底膜症候群が2.2%,起立性蛋白尿が6.6%,巣状糸球体硬化症が0.9%である。 (4)最終診断の比較では,非学校検尿群で紫斑病性腎炎と微小変化ネフローゼ症候群が有意に高く,また,膠原病性腎炎も高い比率である。菲薄基底膜症候群は学校検尿群の方が多く,菲薄基底膜症候群やアルポート症候群のスクリーニングとして学校検尿が有効に働いている。 (5)観察期間平均3.7年(0〜22年)での予後の比較では,学校検尿群にて5例の腎機能低下があり,IgA腎症が3例,先天奇形,アルポート症候群が1例である。非学校検尿群では6例ありIgA腎症が1例,紫斑病性腎炎が2例,先天奇形が1例,蚊アレルギーによる急性腎不全が1例,10歳時に発見された時点ですでに血清クレアチニンが2.1mg/dlと腎不全の状態である。先天奇形,逆流性腎症には学校検尿システムの限界を示唆し,乳児検尿,画像検索の導入などが必要である。
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