研究概要 |
今年度はThin basement membrane disease(以下TBMD)の臨床病理学的に検討し、以下の結果を得た。 対象と方法 1977年から1996年までの19年間に当科で腎生検を行った825症例中TBMDと診断した13例(腎生検例の1.6%)である。TBMDとの診断は,電子顕微鏡上2個以上の糸球体が観察しえた症例で,Osawa et al.の方法で腎糸球体基底膜が200nm以下の非薄化を50%以上の基底膜にみられる,いわゆるDifruse型のものとした。組織の検討は,従来の光学顕微鏡,電子顕微鏡,蛍光抗体法所見に加えて,酵素抗体法でIV型コラーゲンα鎖サプクラス蛋白の発現も検討した。 結果 性別は,女性7例,男性6例であった。発見年齢は,3.4歳から11.2歳で平均6.7±2.2歳で,その動機は,学校検尿が約半数にあたる6例と最も多かったが,肉眼的血尿で発見された例が2例みられた。家族歴で,尿異常は女性の2例,男性の4例にみられた。尿中赤血球形態を観察しえた12例中11例がdysmorphic patternであった。平均観察期間の6.1年で腎機能の低下を認めた症例はなかったが,酵素抗体法で糸球体係蹄壁にIV型コラーゲンα3・4・5鎖蛋白の発現の減弱がみられた男性の1症例では,蛋白尿の増加が見られた。 結論および考察 TBMDの診断・経過は慎重に対応する必要があり、IV型コラーゲンα鎖蛋白の検索を行う事はTBMDの診断および遺伝性進行性腎疾患であるAlport症候群との鑑別に有用と考えられた。
|