研究概要 |
小児IgA腎症12例を対象に腎組織障害と腎組織IL-6および尿中IL-6について検討した。 1)対象と方法:発症年齢:4.7〜14.9歳で平均10.9歳。男児6例、女児6例。発見動機は学校検尿10例、肉眼的血尿が2例である。生検までの観察期間は平均l.49年。血清クレアチニンは平均0.65mg/dl、一日尿蛋白の平均が1.03g/m^2/dayで5例が1g/m^2/日以上の高度蛋白尿を呈していた。 腎組織は脱パラフィン後、間接法にてモノクローナルマウス抗ヒトIL-6抗体を反応させた。尿中IL-6の測定はCLEIA法にて測定した。光顕は重松のGrade-Stage分類にて糸球体スコア(grade(Gg),stage(Sg))、尿細管間質スコアを求め評価した。 2)結果:尿中IL-6は平均33.01pg/mgであった。5例で増加をみとめ、特に肉眼的血尿を呈した症例で著明に上昇していた。組織IL-6スコアは糸球体grade,stageいずれとも相関を認めた。主に急性病変をしめす糸球体Gradeスコア(Gg)は糸球体IL-6スコアと相関がつよく(rs=0.713)、慢性病変をしめす糸球体Stageスコア(Sg)は尿細管間質IL-6スコアとより強く有意な正の相関がでていた(rs=0.818)。IL-6全体としてはgradeよりもstageのほうがより強い相関が認められた。尿細管間質スコア(Ti)とは糸球体IL-6スコア、尿細管間質IL-6スコアどちらとも相関がみられ、特に尿細管間質IL-6スコアでより強く相関が見られていた(rs=0.804)。一日尿蛋白との比較では糸球体IL-6スコア、尿細管間質IL-6スコアともに相関がみられた。尿中IL-6との比較ではあきらかな相関をみとめてなかった。 3)結論:組織内IL-6はとくに慢性変化を示す光顕所見と強く相関がみられ、組織IL-6は急性期が多い小児IgA腎症において予後の判断、とくに慢性経過を辿る症例の鑑別に有用であることが示唆された。
|