研究概要 |
平成9年度(1997) : 800例の腎生検試行例のうち600例を対象に生検時臨床検査成績、腎組織像と予後を含むデータベースを構築した。学校検尿を契機に発見された慢性腎疾患はIgA腎症が最多で48%を占める。先天性奇形や基底膜菲薄症候群はそれぞれ3.1%と2.2%を示す。学校検尿は慢性腎炎、とくにIgA腎症、基底膜菲薄症候群や遺伝性腎炎の発見に有用であるけれども、先天奇形や逆流性腎症などの乳児期検尿や画像診断を必要とする腎疾患には限界がある。 平成10年度(1998) : 13例のThin basement membrane disease(以下TBMD)症例においてIV型コラーゲンα鎖サブクラス蛋白の発現を臨床病理学的に検討した。平均観察期間の6.1年で腎機能の低下を認めた症例はなかったが,酵素抗体法で糸球体係蹄壁にIV型コラーゲンα3・4・5鎖蛋白の発現の減弱がみられた男性の1症例では,蛋白尿の増加が見られた。従って、IV型コラーゲンα鎖蛋白の検索はTBMDの診断および遺伝性進行性腎疾患であるAlport症候群との鑑別に有用と考えられた。 平成11年度(1999) : 小児IgA腎症12例を対象に腎組織障害と腎組織IL-6および尿中IL6について検討した。 尿中IL-6と組織内IL-6との有意な相関はみられなかったが、蛋白尿と組織障害の程度とは正の相関が見られた。組織内IL-6はとくに慢性変化を示す光顕所見と強く相関がみられ、組織IL-6は急性期が多い小児IgA腎症において予後の判断、とくに慢性経過を辿る症例の鑑別に有用であることが示唆された。
|