本年度は、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症男児例で、新生児に発症するような古典的経過を呈する症例での変異OTCタンパクがin vivoでどのような挙動を示すかを検討する基礎的情報を得るために、昨年経験した新生児期発症男児例につき解析をした。剖検肝からRTPCRでcDNAを調製し、ほぼ全長をシークエンスしたところ、782番目のTのCへの置換が同定された。この結果、261番目コドンのイソロイシンのスレオニンへの置換を生じる(I261T変異)事が推定された。この塩基置換がTsp 509I siteを新たに生じる事に基づき、ゲノムDNAについて、このsiteの検索を行ったところ同siteが検出され、cDNAで検出された変異がゲノムDNAでも確認された。また免疫ブロッティングではCRMは検出感度以下であった。また、第5エクソンから下流で247コドンまでの変異はほとんど新生児発症であるのに対し、264コドン以降は遅発型であるが、今回の結果から、変異部位が261コドンと264コドンの間を境に、いずれ側にあるかが臨床症状を規定する一因となる事が推測された。また、患児の母親が再度妊娠、出生前診断の希望があったため、絨毛と羊水細胞を材料として、SRYによる性別診断とTsp509I siteをマーカーとした遺伝子診断を行ったところ、野性型ホモのパターンを呈し、正常女児と判定され、出生後も正常に生育している。来年度以降は、以前同定したR40H変異タンパクと今回同定したような新生児発症の変異タンパクとの発現、ミトコンドリアへのの転送などをin vitroで検索して行く予定である。
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