1.変異OTCのミトコンドリア間質側への転送の研究 プレシークエンスを含む野生型およびR40H変異OTC cDNAをtransfectionし、得られたRNAからmRNAを回収し、OTC mRNAを調製した。それをtemplateとしてin vitro translationによってS35-メチオニン標識OTC調製を行い、分離ラット肝ミトコンドリア分画に添加、転送を行わせたところ、溶出容量および放射活性分画の溶出容量および同分画放射能の取り込み量のいずれについても再現性に乏しく、標識タンパクの生成、転送後のOTCタンパクの分離のいづれにも原因があるものと考えられる。これらの点につき今後も引き続き検討の必要がある。 2.古典型OTC欠損症症例の出生前遺伝子診断 古典型OTC欠損症の男児例でI261T変異が認められた。次子の出生前診断を行ったところ胎児は野生型のホモ接合と診断した。このような変異は酵素欠損の機構が遅発型の遺伝子変異とは異なることが予想され、細胞内動態の解析が待たれる。 3.遅発型男子OTC欠損症の生命予後因子の検討 本研究の期間中に過去の症例を含め、10例の遅発型男子OTC欠損症及びその関連症例を経験した。これらの例は、おおくは初発時に死亡することが多く、生命予後が不良であるため、その予後を決める因子の解析を企画した。その結果、発症時年齢、血漿アンモニア値、血液pH、8種類の血漿アミノ酸値などが有意の因子と判明した。
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