研究概要 |
染色体バンド11q23は造血器腫瘍、とりわけ乳児白血病における染色休転座の主な切断点の一つである。11923転座を有する白血病は予後が悪い。我々は乳児白血病に観察されたt(11;19)(q23;p13),t(4;11)(q21;q23)の共通の11923に局在する転座関連遺伝子MLLを単離した。さらにt(11;17),t(11;22)の11923転座関連遺伝子がMLLてあることを報告している。このように大部分の11923転座にMLL遺伝子が関与していることが示された。MLLcDNAのDNAシークエンスの結果、ショウジョウバエの体節形成に関わるホメオテイック遺伝子Trithoroとホモロジーがあり、2つのDNA結合部位を有する転写因子であることが判明した。興味あることにMLL遺伝子は転座により常に一定の領域で切断され、しかも遺伝子のコード領域でin frameに切断され、パートナー遺伝子と融合したキメラmRNAを形成することが明らかになった。キメラmRNAによって形成されるキメラ蛋白が発癌に関与すると考えられた。そこで我々は解析したt(11;19)(q23;p13)のキメラ転写産物MLL-LTG19のキメラ蛋白の形成を抑制するためにMLL-LTG19の融合部位に対するアンチセンスDNAを作製し、t(11;19)を有するKOCI33細胞を処理した。その結果、KOCL33細胞の増殖を抑制し、アポトーシスを誘導できた。この結果からパートナー遺伝子と融合したキメラmRNAおよびキメラ蛋白が白血病の発症に直接関与していることが明らかになった。さらにこのキメラ遺伝子の融合部をはさむプライマーを用いることにより10^5に1個のt(11;19)転座を有する乳児白血病細胞が体内に存在すればPCR法により検出可能であった。このことはこのような患者における治療効果の判定、再発の早期察知に有用であり、臨床上重要な残存白血病細胞の客観的評価となろう。
|