グルココルチコイド(GC)はアポトーシスを誘導することにより抗腫瘍効果を発揮するが、その詳細は不明な点が多い。本研究ではアポトーシス実行分子として知られるカスペースファミリーと呼ばれる一群のプロテアーゼのうち、いずれの活性化がGCによるアポトーシスに関与しているか、またかスペース阻害剤がアポーシスで見られるミトコンドリアやDNAの変化にいかなる影響を与えるかを白血病細胞株を用いて解析した。 白血病細胞株697はデキサメタゾン(DEX)でアポトーシスに陥るが、その際広範囲のカスペース阻害剤であるzVAD-fmkを加えると、ミトコンドリアの膜電位低下、活性酵素の産生、細胞死そのものが効率よく抑制された。一方でカスペース3様プロテアーゼに特異的な阻害剤Ac-DEVD-CHOはDNAの断片化は抑制したものの、ミトコンドリアの変化及び細胞死そのものはほとんど阻害しなかった。以上の点からGCで誘導されるアポトーシスにおいてzVAD-fmkで阻害されAc-DEVD-CHOで阻害されないカスペースがミトコンドリアの変化により上流に存在することが示唆された。 カスペースは前駆体として合成され、限定分解により活性化されることがわかっている。GC感受性白血病細胞株697及びJurkatをDEXで処理し、様々な時間経過で蛋白質を抽出して坑カスペース抗体を用いてウェスタンブロットを行った。その結果、多くのアポトーシスの際、カスペースカスケードの下流で活性化されることが報告されているカスペース3は限定分解を受けていないことが明らかとなった。そのかわりにやはり下流カスペースであるカスペース6、7が限定分解により活性化されていることがわかった。以上の点からGCによるアポトーシスはカスペース3が関与しない特殊な経路をとるアポトーシスであることが明らかとなった。
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