研究概要 |
1.目的:乾癬群における膿疱化には好中球のリクルートメントが必要になるが,その因子としてTNFαに目し,正常ヒト角層ならびに乾癬鱗屑刺激による好中球のIL-8産生に対するTNFαのプライミング効果を検討した. 2.方法:好中球((10^5個/検体)を前もって37℃,60分TNFα(1nag)で処理する.正常ヒト角層ならびに乾癬鱗屑抽出液(2.5mg/ml濃度),10%?の血漿を加え,12時間37℃に保持した後,ELISA法によりIL-8を測定した. 3.正常ヒト角層刺激による検討:TNFα未処理,処理群の好中球のIL-8産生量はそれぞれ1659±292pg/ml,1468±792pg/mlであり,TNFαによるプライミング効果は認められなかった. 4.乾癬鱗屑抽出液による検討:TNFα未処理,処理群の好中球のIL-8産生量はそれぞれ23649±4937pg/ml,41067±5647pg/mlであったが,鱗屑抽出液そのもののIL-8量も23618±4937pg/mlと高値を示した.一方,膿疱性乾癬の鱗?屑抽出液においてはTNFα処理群でIL-8産生量の亢進は見られなかった. 5.考案:乾癬においては,TNFαが産生されるとそれにより好中球はプライミングを受け,新たに角層細胞とのfrustrated phagocytosisによりオートクライン的にL-8を産生し,末梢血中からの好中球のリクルートメントに関わる可能性が示唆され?た. 6.これからの検討:乾癬の鱗屑はすでに補体C3biによるオプソニン化を受けており,血漿なしの系での検討が必要であると思われる.また,膿疱性乾癬においてはTNFαによるプライミング効果のないことから,この鱗屑抽出液中のTNFαの測定も併せて必要であると思われる.
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