本研究の対象となる乾癬は遺伝と環境因子が主たる要因となって発症する、免疫遺伝病の一つとして考えられるようになってきた。この疾患はT細胞の表皮内浸潤とともに表皮が増殖し、炎症の強い部位では好中球が角層下へ集積し、典型的な病変を形成する。その発症機序の詳細はいまだに明らかにされていない。しかし、初期病変は湿疹反応と鑑別できず、乾癬病変がどのようにして表皮増殖と好中球集積を伴って進展して行くのか、病理組織学的な検索だけでは明かにするのは困難であり、病因解明には今までと異なる着想が必要である。乾癬の病態や病因を明確にするために、補体の活性化がどのように関与しているのか明らかにすることは重要な研究の一つであることが分かる。 乾癬の治療としてUVBとPUVAの有効性が確立されている。今年度の研究では、紫外線の表皮細胞C3産生に対する効果をin vitroで調べた。その結果、PUVAはC3産生を容量依存性に抑制することがわかった。一方、UVBは予想に反して二相性の反応を示した。つまり、75mJ/cm^2以上ではC3産生を抑制したが、50mJ/cm^2まではむしろC3産生を増強した。これらの効果はmRNAレベルでコントロールされていることをRT-PCR法を用いて明らかにした。この増強効果はUVB紅斑の生じる機序を説明すると考え、投稿準備中である。 これらの実験結果を踏まえて、平成10年度は、以下の3実験を行う予定である。1)乾癬病変部でC3の産生が増強されていること、治療とともにC3産生が低下することをcold in situ hybridization法を用いて証明する。2)C3遺伝子のpromotor regionの5'-flankregionのdeletion mutantsを作製し、C3産生に関与するtranscription factor(s)を明らかにする。3)C3 5'-flank regionのdeletion mutantsを用いて、紫外線がいかなるtranscription factor(s)に影響を与えるかを明らかにする。
|