私たちはこれまで乾癬およびその類縁疾患に特徴的な無菌性膿疱がどのようにして形成され、どのような生物学的意義を持つのか補体の活性化を中心として明らかにしてきた。補体は外来の微生物や体内で産生される異物を排除するのに役立つばかりでなく、補体の活性化が細胞性免疫を促進する働きをしていることが報告されている。本研究では、乾癬の治療法として使用される紫外線(UVB.UVA.PUVA)が補体の産生異常を制御できるか明らかにするのが目的であった。 私はヒト表皮角化細胞によるC3産生能を検索した結果、代表的な炎症性サイトカインであり、免疫・炎症反応に伴って産生されるIFNγとTNFαがC3産生を著明に促進することを示した。この結果をもとに、本研究では、紫外線で前処理したのち、ヒト培養角化細胞をIFNγあるいはTNFαで刺激し、産生されるC3量が影響を受けるかどうか検索した。その結果、当初の予想に反して比較的低用量のUVB(<50mJ/cm^2)ではむしろ、C3の産生は増強され、75mJ/cm^2以上で抑制されることが分かった。一方、UVAあるいはPUVAで処理したときにはUVAの用量依存性にC3産生が抑制された。これらの結果から、UVBとUVAは異なる機序を介して乾癬病変の軽快に役立っている可能性を示唆した。 さらに、UVBがC3の産生を増強することが分かったので、UVB紅斑における炎症反応に補体が関係しているかどうか検索した。その結果、UVB照射後数時間後から好中球とCD4陽性T細胞の浸潤がみられ、RT-PCR法にてC3とIL-8、TNFαの発現が証明され、これらの炎症性細胞浸潤に補体活性化とIL-8とTNFαが関係していることが推察された。さらに、6時間後からIL-2とIFNγのmRNAの発現がみられ、CD4腸性T細胞の活性化に伴い、Th1サイトカインが産生されていることが証明され、UVB紅斑において好中球ばかりでなくCD4陽性T細胞が重要な働きをしていることが明らかとなった。 本研究のもう一つの目的であった乾癬患者表皮細胞による補体成分の過剰産生があるかどうか明らかにすることはできなかったが、本研究は乾癬の発症機序ばかりでなく、UVB紅斑における炎症反応の機序を理解するのに貢献すると考える。
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