研究概要 |
悪性黒色腫の培養細胞株を用いた研究では、第9染色体短腕の9p21に黒色腫の発癌に関与する重要な癌抑制遺伝子が存在することが示唆されている。p16^<INK4a>はその有力な候補遺伝子であるが、それの黒色腫の発癌における役割は明らかではない。われわれは日本人の原発性皮膚悪性黒色腫46例を対象とし,p16^<INK4a>の不活性化を検討した。Loss of heterozygosity(LOH)分析では、46例中11例(24%)に9p21のLOHを検出した。これら11例におけるp16^<INK4a>遺伝子のシークエンジングでは、2例でこれまでに報告されていないp16^<INK4a>遺伝子の新しいgermline polymorphismが見い出されたが、有意の体細胞変異は検出されなかった。さらに、9p21のLOHを示さない19例についてもp16^<INK4a>遺伝子exon2のシークエンシングをおこない、1例にコドン81のC->T変異(His->Arg)を検出したが、他の18例には変異は認められなかった。9p21のLOHまたはp16^<INK4a>遺伝子の体細胞変異を示した12例を対象にメチル化特異的PCR法を用いて、p16遺伝子の転写抑制をひき起こすプロモーター領域のCpG islandのメチル化の有無を検討したが、全例においてはメチル化は検出されなかった。一方、免疫組織学的染色を施行した39例中6例(15%)においてp16蛋白の発現が全く検出されず,これらの腫瘍ではp16遺伝子のhomozygous deletionが生じていることが推測された。以上の成績から、皮膚悪性黒色腫の原発巣におけるp16^<INK4a>遺伝子の不活性化は、黒色腫細胞株に見出されるほど高頻度ではないことが示され、さらに、9p21には黒色腫の発癌に重要な役割を演じるp16^<INK4>の癌抑制遺伝子が存在する可能性が強く示唆された。
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