研究概要 |
本研究は,紫外線による皮膚障害および紫外線発癌において,形質転換増殖因子β(TGFβ)による細胞増殖停止機序の異常が関与しているかどうかを明らかにすることを目的とする。今年度は,紫外線照射による急性皮膚障害とTGFβとの関連を検討するために,中波長紫外線(UVB)1回照射後に起こる細胞増殖停止における形質転換増殖因子β(TGFβ)の関与について免疫組織学的に検討した。ヘアレスマウスの背部皮膚にUVBを200mJ/cm^21回照射し,照射前,照射後,1,3,6,12,18,24,48時間後に皮膚生検を行い,TGFβおよびサイクリンEの発現を各々に対する抗体を用いて免疫組織学的に観察した。照射前の表皮ではTGFβおよびサイクリンEの発現は認められなかった。TGFβは照射1〜6時間後の表皮において発現し、12時間後以降は発現が著しく減弱した。サイクリンEは照射6時間後までは発現が認められず,照射12〜24時間後に強く発現し,その後減弱した。p27,サイクリンDについては照射前後において特に変化は認められなかった。さらに,表皮におけるブロモデオキシウリジン標識指数(LI)を算定したところ,正常表皮に比べて照射1〜6時間後の表皮においてはLIは著しく減少し,12時間後より増加し,24時間後にピークを示したのち,48時間後には正常レベルに戻った。以上の成績から,ヘアレスマウス表皮にUVBを照射後誘導される細胞増殖停止現象において,TGFβによるG1期停止機序が深く関与していることが示唆された。
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