研究概要 |
中村らにより樹立されたNZB/KNマウス(雄)には、関節病変や後背部から尾部にかけて脱毛が高率に認められる。血清学的にはリウマチ因子や、タイプIIコラーゲンに対する抗体が存在する。NZB/KNマウスの脱毛発症の免疫病理学的な検索を行い、自己免疫性脱毛症のモデルの可能性について検討した。その結果次のことが明らかとなった。 1. NZB/KN雄マウスの脱毛病変は、経時的に発現頻度が増し、3か月齢で約25%、12か月齢で80%であった。12か月齢の脱毛の出現頻度は,標準ストレインNZB/N雄、雌、NZW/sk雌はいずれも5%未満。 2. 脱毛発症初期に、真皮血管周囲に単核球浸潤が認められた。NZB/KN雄マウス血清中には毛包組織に対する主にIgMタイプの抗体が高頻度に存在し、毛包組織の基底膜部(BMZ)にはIgMが沈着。 3. (NZWxNZB/KN)F1は,12か月齢で雄13.3%、雌6.7%、F2マウスは雄44%、雌7.3%の脱毛の発現率を示した。Flマウスでは,BMZにIgGの沈着も見られるようになった。F2マウスを用いて、雌雄、H-2、蛋白尿、脾腫について脱毛との相関関係をみると、NZB/KNの胆毛の発症に関係する因子として性差が非常に重要で、脱毛と腎症の間には臨床的な相関があると考えられた。 4. 脱毛とBMZの免疫グロブリンの沈着の間には,特に有意な相関関係は認められなかった。 以上より、NZB/KNマウスの脱毛症の機序を解明するうえで一つのモデルになることが類推された。少なくとも,NZB/KNマウスで見るかぎり,毛包のBMZの免疫グロブリンは脱毛の発症には積極的には関与していない可能性が示唆された。
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