研究概要 |
PGE(PGE受容体にはEP1.EP2、EP3、EP4の4種のアイソフォームが存在する)、PGD、PGF、PGI、TX、合計8種のプロスタノイド受容体があるが、今回はPGD受容体、TX受容体、PGE受容体、それぞれを欠損したノックアウトマウスの皮膚を肉眼的、組織学的に観察し、正常の同系マウスと比較した。一部のPGE受容体ノックアウトマウスでは体毛の異常がみられたが、皮膚自体には肉眼的、組織学的に、有意な異常はみられなかった。次いで、マウス皮膚に中波長紫外線を照射することにより、皮膚の炎症を作製し、耳介の紅斑、腫脹をノックアウトマウスと正常マウスと比較した。ノックアウトマウスの方が炎症反応がやや弱い傾向がみとめられたが、組織学的には日焼け細胞の分布、数には変化はみられなかった。また、マウス耳介にフォルボールエステルを塗布し、一次性刺激性皮膚炎を生じさせ、耳介の紅斑、腫脹を比較したが有意な変化はみられなかった。マウス耳介にDNCBを塗布し、アレルギー性接触皮膚炎を生じさせ、耳介の紅斑、腫脹をノックアウトマウスと正常マウスとを比較したが有意な変化はみられなかった。これらの炎症の組織学的所見もノックアウトマウスと正常マウスとでは同一であった。さらに、マウス背部に実験的皮膚潰瘍を作製し、その創傷治癒を比較した。PGD受容体ノックアウトマウスと正常マウスとでは差がみられなかったが、PGE受容体とTX受容体ノックアウトマウスでは、正常マウスに比較して、若干、創傷治癒に遅延がみられた。以上の結果から、PGE,PGD、TX、など単独のプロスタノイド受容体が欠損しても、プロスタノイドは相互に類似しており、他のプロスタノイドが代償するので、全体としては皮膚には異常が出現しないのではないかと考えられた。体毛の異常については今後検討の予定である。
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