研究概要 |
肥満細胞増殖因子として知られるsteel因子を皮膚に強制発現させたトランスジェニックマウスを作成し、以下のことを明らかにした。 1,過去に我々の作成したマウスでは一例を除きトランスジェニックマウスは発育不全を呈し系統の維持が困難であったが、サイトケラチンプロモーターにマウスsteel因子を接続したDNAの濃度を5μg/mlから2μg/mlに下げることにより、生存可能なモデルマウスの作出に成功した。 2,作成したマウスは、色素細胞が全身の皮膚で異常に増殖し、同所での肥満細胞の増加も観察されたので肥満細胞症・色素性じん麻疹症のモデルマウスとして適していると判断された。発生階段による肥満細胞の増殖部位・量の変化については現在研究中である。 3,色素細胞については、全身の皮膚で、胎児16日以降に過剰な増殖が観察された。さらにトランスジェニックマウスでは、野性型では色素細胞が発生初期から存在していない部位にまで色素細胞が分布していたので、steel因子は色素細胞の生存・増殖・分化の他に移動を促進することが明示された。 4,これらのトランスジェニックマウスの作成には膜貫通型、分泌型のsteel因子の両者を発現するDNAを用いている。膜結合型のsteel因子のみを発現するトランスジェニックマウスを新たに作成したところ、色素細胞の増殖はみられたが、肥満細胞の増加は認められなかった。従って、肥満細胞の増殖には少なくとも分泌型のsteel因子が必要であることが明らかになった。
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