ヒスタミン遊離活性を持つ自己抗体をスクリーニングする目的で、本年度はさらにアレルギー鼻炎20人、アトピー性皮膚炎4人、健常人49人において自己血清による皮内テストを施行し、昨年度と同様の結果を得た。また健常人由来の末梢血好塩基球を用いたヒスタミン遊離試験では、皮内テスト陽性血清のうち約27%が陽性で、その中では抗IgE抗体に比し、FcεRI抗体タイプのものが多く認められた。次にこれらの自己抗体の生物活性を簡便に測定する方法を開発する目的で、細胞外はヒト、細胞膜〜細胞内はラットのキメラFcεRI分子を発現するラット肥満細胞株(RBL-3D4)を作製した。強力な発現ベクター(pEF-BOS)に挿入したキメラFcεRIのcDNAは、ネオマイシン耐性遺伝子(pSV2neo)とともに電気穿孔法によりRBL-2H3細胞に導入した。ネオマイシン耐性を指標に得られた細胞は、さらに抗FcεRI抗体を指標にFACSにより単離し、その中でも特に発現率の高い細胞を選択、培養し、さらに抗FcεRI抗体に対する反応性が最も高いクローン(3D4)を選択、確立した。この細胞は安定してヒトFcεRIαサブユニットの細胞外領域を発現してヒトIgEによる感作が成立し、抗ヒトIgE抗体、抗原、および抗ヒトFcεRIモノクローナル抗体の各々に反応して脱顆粒した。また慢性蕁麻疹患者血清に対しては少なくとも一部の血清には明らかに反応して脱顆粒し、かつその反応はキメラFcεRI依存性であった。しかしヒト好塩基球によるヒスタミン遊離試験に比べると陽性率が低い傾向があり、今後その感度と特異性についての検討が必要と思われる。
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