1) 若禿部、非若禿部由来のヒト毛乳頭細胞に発現する特異的遺伝子を調べるため、同一ヒト頭部の若禿げ部、非若禿げ部毛包より毛乳頭を取り出し細胞を培養、それぞれの毛乳頭細胞よりmRNAを採取し、各々の遺伝子の3'末端cDNAライブラリーを構築した。それぞれ無作為に1000個のクローンで塩基配列を解析、遺伝子の発現プロファイルを遺伝子発現データベース(BodyMap:阪大)と比較した。それらの遺伝子について、1群:非若禿げ毛乳頭で発現(+)であるが、若禿げ部で発現(-)の未知遺伝子。2群:若禿げ毛乳頭で発現(+)であるが、非若禿げ部で発現(-)の未知遺伝子。3群:両部位の毛乳頭で発現(+)であるが発現量に大差がある既知遺伝子、を探した。1、2群で計28個の新規遺伝子を検討対象とし、発現量の多いものから1、2群それぞれ3、5個の遺伝子を選び、全DNA配列を決定した。1群の3個、2群の2個については特異的ペプチド抗体も作成した。その後、遺伝子機能や、蛋白のヒト皮膚における局在を解析中で、一部の物はノックアウトマウスも作成中である。その中に若禿げに直接関与する遺伝子や毛周期に関与する遺伝子などが見つかる可能性がある。3群では形態形成に直接関与する2個の既知遺伝子(例:WNT)を候補遺伝子と考え、その発現について他の施設との共同研究を行っている。なお論文発表は特許との関係で次年度になる。 2) 甲状腺ホルモン受容体は毛包細胞全てに存在するが発現量に差があること、甲状腺ホルモンは生理的濃度より高くても低くても細胞に及ぼす生物学的活性が低下することを見出した。 3) ヒト毛乳頭特異的単クローン抗体を作成、毛包における抗原の局在、毛包細胞とのウェスタンブロット、QTOFによる解析結果より、新しいケラチンを認識していることを見だした。
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