皮膚悪性リンパ腫におけるEBウイルス持続感染の病因的役割

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670890
• 研究機関: 福島県立医科大学
• 研究代表者: 岩月 啓氏 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (80126797)
• 研究分担者: 大塚 幹夫 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (70295418) ; 元木 良和 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (40244389)
• キーワード: Epstein-Barr ウイルス / リンパ腫 / 種痘様水疱症 / NK / T 細胞 / 血球貧食症候群

研究概要

皮膚のEBウイルス関連NK/Tリンパ腫やリンパ球増殖症のなかには、特有の臨床症状と組織所見をしめす病型が存在することを報告した(Arch Dermatol,1997).その後も検討を続け、1)血球貧食症候群を示す皮下型リンパ腫、2)CD56陽性リンパ腫、3)種痘様水庖症に関連したリンパ腫、4)悪性組織球症様リンパ腫、5)顔面・眼瞼腫脹と筋肉内浸潤を伴うリンパ腫が代表的病型と考えられた.このうち、重症の種痘様水疱症を思わせる水疱性丘疹と発熱などの全身症状を示した6症例中3例が発症の2-14年後にEBウイルス関連悪性リンパ腫へ進展したことが明らかになった.さらに、これまで原因不明と考えられてきた種痘様水疱症はEBウイルス関連リンパ球増殖性疾患であり、その中で難治性ないし反復性の症例はEBウイルス関連リンパ腫へ進展するリスクを持つ、いわゆる「くすぶり」の状態であることが判明した.
NK/Tリンパ腫は、アジアに多発する原因を解析するために、1)宿主の免疫学的背景、2)ウイルスサブタイプ、3)環境因子の点から解析を進めている.ウイルスサブタイプの大部分は、EBNA2,遺伝子はタイプ1型、LMP-1遺伝子はXho1 site(-)、30bp欠損株が分離された.環境因子として、蚊刺アレルギーと紫外線が注目された.現在のところ、HLAの血清型については明らかな特徴は認められていない.
今後は、種痘様水疱症のような早期病変にどのような増悪因子が働いて進展するのかを臨床的および細胞学的に解析し、治療に結び付ける必要がある.

研究成果

• [文献書誌] Iwatsuki K. et al.: "Atypical hydroa vacciniforme in childhood : From a smoldering stage to Epstein-Barr virus-associated lymphoid malignancy (letter)" Journal of American Academy of Dermatology. 印刷中.
• [文献書誌] Iwatsuki K. et al.: "Association of latent Epstein-Barr virus infection with hydroa vacciniforme" British Journal of Dermatology. 印刷中.
• [文献書誌] Ohtsuka M. et al.: "Epstein-Barr virus-associated lymphoid hyperplasia of the eyelid characterized by intramuscular infiltration" British Journal of Dermatology. 印刷中.
• [文献書誌] Iwatsuki K. et al.: "Cutaneous lymphoproliferative disorders associated with Epstein-Bart virus infection : A clinical overview" Journal of Dermatological Science. 印刷中.
• [文献書誌] 岩月啓氏: "皮膚悪性リンパ腫とEBウイルス" 皮膚科の臨床. 印刷中.
• [文献書誌] 岩月啓氏: "EBウイルス関連NK/Tリンパ球増殖症の皮膚病変" 血液・腫瘍科. 印刷中.
• [文献書誌] 大塚幹夫、他: "EBウイルス感染とリンパ腫、本田まりこ等(編)皮膚感染症治療戦略、皮膚科診療プラクティス" 文光堂, 3 (1998)
• [文献書誌] Iwatsuki K.: "Diagnostic Immunohistochemistry of the Skin (Kanitakis J et al. ed)" Chapman & Hall Medical, 8 (1998)