研究概要 |
1 母児のHLA class II遺伝子に関する新知見 (1) Ro/SSA,La/SSBに対する自己免疫応答は、他民族(白人、黒人)と同様に、HLA-DQ分子の特定のアミノ酸と関連している(J Am Acad Dermatol 36:186-190,1997)。 (2) 母親のHLA class II遺伝子のプロフィルにより、子供の症状(皮膚症状、先天性心ブロック、あるいは無症状)がある程度予測可能である(J Invest Dermatol 108:881-885,1997)。 (3) 母児のHLA class II遺伝子のハブロタイプの相関が、先天性心ブロックの発症に関与している可能性がある(Arthritis Rheum 40:982-983,1997)。 (4) 抗Ro/SSA,抗 Ld/SSB両抗体陽性の母親群と抗Ro/SSA抗体単独陽性の母親群は、HLA class II遺伝子のプロフィルが異なっており、両抗体陽性の母親の方がNLE児を出産する確率が大きい (Autoinmunity,26:95-101,1997)。 (5) 日本人では、Ro/SSA-La/SSB自己抗原に対する免疫応答はHLA-DR8(HLA-DRB1^*08032/DQA1^*0103/DQB1^*0601ハブロタイプ)と相関があり、欧米民族の同抗原に対する免疫応答の遺伝的背景(HLA-DR3,HLA-DRB1^*0301/DQA1^*0501/DQA1^*0201)とは異なっている。HLAとの相関は、抗対のプロフィルと関連があり、SLE、シェーグレン症候群あるいは無症状などの臨床像とは関連しない(Arthritis Rheum、41:927-934、1998)。 2 シエーグレン症候群との関連 NLE児の母親は、シェーグレン症候群の臓器特異抗原であるα-120kd fodrinに対するIgG 抗体が陽性である(J Invest Dermatol 111:1189-1192,1998)ことから、NLEと母親のシェーグレン症候群との関連が明確に示された. 3 予防と治療 NLE児出産のリスクの高い妊婦(既往歴,抗Ro/SSA高値,抗52kd Ro/SSA陽性)に、妊娠初期からステロイドを予防投与することにより、先天性心ブロック児出産を予防できる可能性がある (Obst Gynecol,in press,1999)。
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