本研究の目的は、我々の開発したELISAにより得られる抗体価(ELISAスコア)と病勢との相関関係を検討し、ELISAスコアが病勢をモニターする指標となりうるかを検討する。病勢が悪化する前兆としての抗体価上昇の検出法、あるいはストロイド減量の客観的な判断基準として、本研究により開発される天疱瘡に対するELISA法は臨床上非常に有用な手段となる。本年度は、既に蓄積されている症例の中から、長期にわたる臨床症状の記載があり、経過に沿って複数の血清が保存されている症例を選出した。細胞外領域全長を有し、正しい立体構造を反映した天疱瘡抗原組換え蛋白(Dsg3-His、Dsg1-His)を抗原としたELISA法の細部の条件設定を行った。また、病勢を客観的に定量化するための基準(病変部領域の表面積、新生水疱の数、日常生活への支障度などを考慮)を設定した。従来のヒト皮膚を基質とした蛍光抗体法では、尋常性天疱瘡と落葉状天疱瘡を区別するのは困難であり、特異的抗原に対する抗体価を測定することはできなかった。従来の蛍光抗体法により得られる抗体価と本ELISA法により得られる抗体価を比較し、病勢を反映する指標としてELISA法の方が優れていることを確認した。現在、病勢とELISAスコアの相関性を現在詳細に検討中である。また、患者血清中には病的活性を有しない自己抗体も混じており、より病勢の変動を鋭敏に反映するためには、病的活性を有する自己抗体のみの抗体価を測定することが必要である。そこで、Dsg3-His、Dsg1-His組換え蛋白のC末より様々に欠失させた変異体を数種作成した。今後、これらの変異体を抗原としたELISA法を確立し、病勢スコアとより相関性のあるELISAスコアが得られることを確認する。
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