昨年度の実験では遺伝的糖尿病マウスの背部全層皮膚欠損創にMRSAを接種することにより、慢性の感染性皮膚潰瘍モデルを作製することができた。本年度はこの潰瘍に抗菌作用のある局所外用剤を投与してその効果を比較検討した。 1. 糖尿病マウス(C57BL/KsJ db/db mice)の背部皮膚中央に直径3mmの円形の全層皮膚欠損創を縦方向に2個作製し、MRSA N315 PZR株1X10^5菌を接種して密封した。3日後、感染が成立していることを確認してから、ポビドンヨード白糖製剤を隔日に計4回投与した。菌投与9日目に菌数や組織学的変化を観察したところ、ポビドンヨード・白糖製剤投与群では有意に創が早く閉鎖し、検出されたMRSAの菌数もわずかであった。また形成された肉芽組織もコンパクトであった。一方、非投与群では小膿瘍が多数形成され、創は厚い痂皮で被われて閉鎖しなかった。 2. vancomycinやarbekacinなどの抗生物質を感染潰瘍部へ局所投与する実験を計画したが、抗生物質の局所投与は好ましくないとの指摘を受け、試薬が手に入らなかったので実施できなかった。 3. 軟膏基剤の治癒過程への影響を検討したところ、非感染性潰瘍に対しては、親水軟膏が創傷治癒を遅延させた。しかし、その他の基剤とくに白色ワセリン、白糖基剤、カーボワックスに顕著な差は認められなかった。
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