研究概要 |
コラーゲンゲル中にヒト線雑芽細胞と表皮細胞を混入して培養したComPossie graftをnu-scidマウス背部に移植すると数週後には表皮細胞層と真皮層が形成され,ヒト皮膚類似の構造が形成された.初代培養の表皮細胞に少数混入したメラノサイトは再構成された表皮の基底層に分布した. 線雑芽細胞の代9にヒト頭髪由来の毛乳頭細胞により作製したComposite graftを用いた再構成皮膚組織に対してH-E染色、フォンタナ・マッソン染色、DOPA反応および電子顕微鏡的観察を行なった.その結果、毛乳頭細胞を用いた再構成皮膚では表皮層のみならず真皮層へもメラニン顆粒の滴落やメラノサイト自身の遊走が認められた.われわれはELISAアッセイにより培養ヒト毛乳頭細胞からのSCF産生を確認したので、この再構成皮膚にみられたメラノサイトの変化が毛乳頭細胞から分泌されるSCFに起因するものではないかと考え、毛乳頭細胞により作製したComposite graftのコラーゲンゲル中に抗SCF抗体を加えて同様に移植したが、再構成皮膚にはとくに変化はみられなかった.またヒト線雑芽細胞によるComposite graftのコラーゲンゲル中にヒトr-SCF(100μg/well)を添加して同様に再構成皮膚の組織像を検討したが変化はみられなかった.いずれも添加濃度の設定を検討中である. 実体顕微鏡下にヒト頭髪由来の毛包から単離した毛乳頭組織3〜4個を線雑芽細胞と表皮細胞によるCompoite graftのコラーゲンゲル中へ注入した.マウス背部に移植後、組織学的に検討したところコラーゲンゲルの中に埋没させた毛乳頭組織はわずかに残存していたが、その周辺には毛包構造の増数が認められた.これは周辺のマウス表皮から誘導された可能性もあるが、埋没した毛乳頭組織由来の成長因子やサイトカインの影響も考えられた.
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