研究概要 |
II型糖尿病モデルであるKK-Ayマウスは、生後5-6週より自然発症し、尿糖陽性、高血糖、高インスリン血症を示す。同系マウスの脾細胞に対して、8-methoxypsoralen(8-MOP)と長波長紫外線(UVA)併用による光化学(PUVA)処置を行った後、発症前マウスに移入して発症の予防効果を検討した。効果判定は、0.5g/kgのグルコース腹腔内投与負荷試験前後(0,30,60,120分後)の血糖値並びに血清インスリン値を測定して、無処置群と比較検討した。 1)発症前の4週からレシピエントマウスにPUVA処置した細胞で免疫を開始し、週1回4回施行し、発症予防への効果を検討した。PUVA群では、空腹時血糖の有意な低下に加えて、グルコース負荷試験後の異常な血糖上昇が緩やかとなった。また、負荷後の血糖の過上昇が抑えられると同時に、空腹時の無処置マウスで見られる異常に高いインスリン分泌は減少し、PUVA療法は糖毒性を抑制し、糖尿病進展予防に有効であることが判明した。この効果はコントロール群(無処置脾細胞投与群、8-MOP処置脾細胞投与群、UVAのみを照射した脾細胞投与群)では認められず、PUVA処置群に特異的なものであった。 2)しかしながら、発症後のレシピエントマウスでは、同様の効果は認められなかった。 3)発症前に免疫を開始した場合、PUVA施行回数を1回に減じても、空腹時血糖の有意な低下、並びにグルコース負荷後の血糖の過上昇と空腹時インスリンの異常高値が抑えられた。 4)ドナー脾細胞を発症前の4週令より調整し、PUVA療法を施行しても、同様の効果が得られた。 奏功機序として、PUVA処置されたT cellによるvaccination効果の可能性が考えられる。今年度は免疫するT細胞分画をさらに細分化して行い、本実験系におけるPUVA療法の有効性の機序解明をめざしたい。
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