研究概要 |
8年前こ私共がserendipityとして発見した抗carbonic anhydrase(CA)抗体に関して、その発生頻度、抗原分析などを様々な方法で検討してきた。今回は更にELISA法を応用して抗CA-II抗体を膠原病(SLE,PSS,Sjogren's syndrome,皮膚筋炎)の日本人患者109血清について検討し、SLEで24.1%、PSSで16.7%、Sjogren's syndromeで20.0%、皮膚筋炎で25.0%に証明しえた。しかし対照とした健常人、アトピー性皮膚炎、類天疱瘡、乾癬ではすべて陰性であった。次にCA-I,IIのepitope mappingを施行した。すなわち、その一次構造をもとにCA-IをP-1〜P-21,CA-IIをP-1〜P-20に分類し、合成ペプチドを作成、上記血清でELISA法を実施した。その結果、CA-IではSLEでP-1,P-2、PSSでP-1、sjogren's syndromeでP-4に対する特異的抗体の存在が認められた。一方、CA-IIではSLEでP-2,P-8、PSSでP-8,P-15、Sjogren's syndromeでP-2,P-8、皮膚筋炎でP-8に対する抗体価が高値であった。なお健常人ではP-20と反応したが、これは膠原病を含めて共通抗原であった。 また、SLE2症例の治療経過とepitope peptidesとの関係、即ちepitope spreadingの有無を検討した。治療経過によって抑制される抗体と抑制されない抗体、同時に疾患の活動性と相関するものとしないものの存在が示唆されたが、この点に関しては症例を追加し、長い治療経過で判定する方針である。 将来は更にどのようなepitopeに対する自己抗体が病因あるいは病態として意味があるのかを検討する必要がある。同時に、T細胞の関与した細胞性抗体の意義についても検討する予定である。
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