平成11年度 1)昨年に連続して新型形状のステント試作を行った。昨年と異なる点はニチノールワイヤーでの編み込みステントは特許申請上で困難な問題があり、編み込みステントではなく、血管の蛇行に追従性の良い、生体の体温で記憶されたメモリーとなる自己拡張型のステントを作成に変更した。薄いニチノール金属プレートを用い、コンピュータグラフィックス上で蛇行追従性に優れていると考え予めデザインされた形状をレーザーカツト法にてカットした。さらに白金ワイヤーにて筒状にステントを整えた。カット部位をレーザー溶接することも考え試みたが、安全確実な溶接は不可能で臨牀応用困難と判定した。現在国内の技術力ではパイプからのレーザーカット技術力はなく海外のメーカーと交渉中で平成12年度以降の研究課題である。 2)新型ステントを用いた生犬での安全性確認の実験は本年度は施行できず。 3)平成11年度に予算の一部を用いて試作したニチノールステントを用いた臨牀例は4例あり、いずれも血管の蛇行の追従性に優れた良好な成績が得られている。2例は腹部大動脈瘤のY型人工血管留置、1例はマルファン症候群で右鎖骨下動脈解離、1例は放射線動脈炎による血管破綻症例に人工血管被覆ステントとして使用した。 4)血管内ステント留置後の急性血栓および新生内膜肥厚に対するベラプロストナトリウム-Prostaglandin I_2誘導体-の有用性 雑種成犬腸骨静脈を用いた実験的検討を行った。血小板凝集能抑制作用に関して:ベラプロスト投与群では投与後30分ですでに投与前に比べ約50%まで凝集能を抑制しており、抑制作用はその後もほぼ同レベルで推移した。反復測定-分散分析および多重比較検定からコントロール群との比較では測定した3点すべてで有意差を認めた。また血管平滑筋細胞増殖に関する検討ではZ-stent挿入7日後および14日後で有意差を認め、血管平滑筋細胞増殖抑制効果が証明された。この結果は2000SCVIRにて報告予定である。
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