研究課題/領域番号 |
09670911
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
細井 義夫 東北大学, 医学部, 助教授 (50238747)
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研究分担者 |
池畑 広伸 東北大学, 医学部, 助手 (90250737)
山田 章吾 東北大学, 医学部, 教授 (60158194)
小野 哲也 東北大学, 医学部, 教授 (00107509)
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キーワード | ATM / DNA-PK / PI-3キナーゼ / ataxia telangiectasia / scidマウス / 放射線 |
研究概要 |
近年放射線感受性に関与する遺伝子として、ataxia telangiectasia(AT)の原因遺伝子ATMと、DNA依存性プロテインキナーゼの構成要素の遺伝子DNA-PKcs、Ku70、Ku80がクローニングされた。ATMとDNA-PKの塩基配列より予想されるアミノ酸配列の検索から、両蛋白ともにPI-3キナーゼと高い相同性を示すドメインを持つものと推定されている。本研究では、PI-3キナーゼの阻害剤の1つ、wortmanninが、癌細胞の放射線並びに抗癌剤の1つbleomycinに対する感受性を高めることを明らかにしたので報告する。まず培養脳腫瘍細胞T98Gを用い、wortmanninの毒性を検討した。その結果、75μM以上の濃度で毒性が認められた。このため以下の実験は50μMまたは25μMの濃度で実験を行った。次に、50μM wortmanninがT98G細胞のbleomycin感受性に及ぼす影響を検討した。その結果、wortmanninはbleomycin感受性を高めることが明らかになった。wortmannin投与量とbleomycin増感効果を検討した結果、wortmanninの増感効果は投与量依存的で、25μM以上の濃度で認められた。これらのbleomycin増感効果は、A172(脳腫瘍細胞)、TAT3(AT線維芽細胞)、LM217(正常線維芽細胞)、SCID-F(scidマウス線維芽細胞)、C.B.-17/Icr-F(正常マウス線維芽細胞)でも認められた。次に、T98G細胞を用い、50μM wortmanninがmytomycin C感受性に及ぼす影響を検討したが、増感効果は認められなかった。次に25μM wortmanninが放射線感受性に及ぼす影響を検討した結果、上記全ての細胞で放射線感受性を高めた。最後に、50μM wortmanninがT98G細胞の紫外線感受性に及ぼす影響を検討したが、影響は認められなかった。以上の結果から、PI-3キナーゼ阻害剤の1つwortmanninは、放射線や一部の抗癌剤の増感剤として有望であると考えられる。今後はより特異性が高く、毒性の低い薬剤の開発が期待される。
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