研究概要 |
1.マウス(C57BLおよびBALB/cAJcl-nu)に,0.5-5.0Gyの照射を行い,経時的に,照射から4,6,12.18,24時間後に睾丸を摘出して,ブアン固定パラフィン包埋切片,ホルマリン固定パラフィン包埋切片を作製し,H.E染色,TUNEL染色を行って,照射によって誘発された細胞死について検索したが,睾丸を構成する細胞の中で,精原細胞が最も放射線に対して感受性であった.さらに,精細管を12のステージに分けて,それぞれにおける精原細胞について検索すると,stage10-12,stage1-6に相当するA2,A3,A4,Intermediate,B精原細胞の感受性が高く,特に,stage1-6のA4,Intermediate,B精原細胞では,高率に核クロマチン濃縮を伴った細胞死が誘発された.この細胞死は,いくつかの点で,通常の放射線誘発アポトーシスとやや異なっていた.まず,その誘発の時間的ピークが,通常の照射後6時間よりもやや遅く,約12時間後であった.さらに,形態的にも,同時に検索した小腸のクリプト細胞,胸腺や脾臓のリンパ球等のアポトーシスとやや異なり,他で見られるような核クロマチンの核辺縁への境界明瞭な凝集や典型的な断片化の所見は非常に稀であったが,TUNEL陽性のものが多く,電顕的にもアポトーシスを示唆するような所見が認められた. 2.p53ノックアウトマウスについて,同様な実験をおこなった.p53+/+(wild type)と比較して,p53-/-(homo)マウスでは,照射前のアポトーシス様細胞死の頻度に明らかな差を認められなかったが、照射によるアポトーシス様細胞死の誘発は著しく低率であった.小腸,胸腺,脾でも同様で,p53-/-マウスでは,放射線誘発アポトーシスほほとんど認められなかった. その他の臓器における比較,さらにp53+/-(hetero)マウスでの放射線誘発アポトーシスについては,現在,検索中である。
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