研究概要 |
本研究では経動脈性門脈造影下CT(CT during arterial portography;CTAP)と肝動脈造影下CT(CT during hepatic arteriography;CTA)による結節内血行支配診断と日本肝癌研究会による組織型との関連を検討し、これらの結節の悪性度診断における有用性を明らかにすることを目的とした。その結果の概要については平成9年度の報告書に記載したが以下のごとくである。対象はCTAPあるいはCTAが施行されたのち組織学的に確診された201結節である。CTAP上結節内門脈血流は周辺肝と同等(A),やや低下(B),一部欠損(C),全体が欠損(D)に分類され、腺腫様過形成(AH)はAを、異型AH(AAH)はBを、高分化肝癌(wd-HCC)はCを、中ないし低分化肝癌(mp-HCC)はDを示す割合が他の組織型に比し有意に高かった。CTA上の結節内動脈血流は、周辺肝と同等(I),低下(II),一部増加(III),全体に増加(IV)に分類され、mp-HCCがIVを示す割合が他の組織型に比し有意に高かった。またAHがIを、AAHがIIを、wd-HCCがIIIを示す傾向がみられた。初期の高分化肝癌はCTAP,CTAでいずれもAAHとwd-HCCの中間の血行を示した。また、結節内血行支配と結節の生物学的悪性度を自然経過観察結節で検討した。結節の悪性化を結節がDあるいはIVを示すようになることと定義した。CTAPあるいはCTAを6ヵ月以上の間隔で繰り返し施行した176結節の非治療結節についてその悪性化率をKaplan-Meier法で検討した。AおよびI型を示す結節では経過観察期間内(約2年)で悪性化したものはなく、BあるいはII型を示すものは約30%が悪性化し、CあるいはIII型を示すものは約90%が悪性化した。すなわち、結節内血行支配診断による結節の悪性度評価は結節の生物学的悪性度とも良好に相関することが示された。以上の結果より結節内血行支配の画像しよる評価は肝硬変における種々の肝細胞性結節の臨床的取り扱いの決定に有用であり、大きな意義があると考えられた。
|