キトサンを^1N濃度の酢酸に溶解した液の中に自作の金属ステントを浸し、^1Nの水酸化ナトリウムを重合させることにより、金属ステントをキトサンで被覆することには成功した。しかしながら、キトサンは、肉眼的にも厚く被覆され、その程度も均一性を欠いていた。また、その安定性についての検討では外部からの障害に弱く、全属ステントを留置するためのデリバリーシステムの中で、デリバリーが円滑に進まなかったり、被覆したキトサンが部分的にはがれるなどの問題を生じた。この為、被覆したキトサンの中に薬剤を安定して混入させることは困難であった。 経口薬剤と再狭窄との関係については、静脈麻酔した家兎の大腿静脈と大腿動脈を切開して、血管造影用シースを挿入し、自作の金属ステントをX線透視下にその腹部大動脈と下大静脈に進めて、その部位に埋め込んだ。これらを2群に分け、1群では埋め込み術の1週間前から埋め込みの4週間後に屠殺するまでトラニラストを食餌に混ぜて与え、コントロール群では通常の食餌を与えた。屠殺後、金属ステントを埋め込んだ部分の大動脈と下大動脈を摘出してホルマリン固定し、内皮の増殖の程度や血管の狭窄率について顕微鏡下に面積測定用ソフトを用いて計測し、2群の差について検討した。結果、下大静脈では、ともに内膜の肥厚や狭窄の程度は軽く、有意差を認めなかったが、腹部大動脈においては、トラニラスト群では、有意に内膜肥厚の程度が軽く、また血管自体の狭窄率も低かった。以上より、経口の抗アレルギー剤の服用で、過剰な反応牲の内膜増殖を抑えることにより、全属ステント留置後の再狭窄が防止できる可能性が示唆された。
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