研究概要 |
位相法を利用したMRIを用いて冠静脈洞の血流量を計測し、心筋1gあたりの冠血流量を非侵襲的に定量評価した。対象は正常ボランテア9例及びHCM患者15例である。冠静脈洞の高速Velocity encoded cine MRIをジピリダモ-ル投与前後で呼吸停止下に撮像し、冠静脈洞内の平均血流速度×面積を積分して冠血流量を求めた。心筋重量は心尖部から心基部までの高速シネMR像を撮像し、心筋面積の積分値と心筋比重の積から求めた。MRIによる正常例の心筋1gあたりの安静時冠血流量(0.74±0.23ml/min/g)は従来報告されているPETによる値(0.76-0.93ml/min/g)と近い値を示した。HCM患者の冠血流量(0.54±0.18ml/min/g)は安静時から正常例よりもやや低下していた(p<0.05)。一方、ジピリダモ-ル負荷後のHCM群における冠血流量は、正常例(2.14±0.51ml/min/g)と比較してかなり低い値までしか増加せず(0.98±0.36ml/min/g,p<0.01)、HCM群のCFRは正常と比較して有意に低下していた(1.87±0.50vs 3.01±0.75, p<0.05)。これらの結果は、従来PETないしカテーテル法を必要とした心筋血流に関する定量的情報をMRIが非侵襲的に提供し得ることを示している。
|