研究概要 |
1.臨床例における肺野MR画像の検討 伸展固定標本での検討を元に、臨床例において、どこまで肺野の正常構造や種々の病変を描出できるかを検討するために、他疾患の検索を目的としてMR検査を施行した症例において、患者の同意を得てスキャンを追加した。伸展固定標本で用いたFOV 12cm,スライス厚2mmでは臨床例においては解析可能な画像が得られなかったために、FOV16cm,スライス厚6mmを用いて、FSE法、およびFGE法によりスキャンを行った。呼吸運動が安定していた症例では、FGE法において正常肺における末梢肺血管の描出は二次小葉内まで可能であったが、呼吸運動の不規則な症例では末梢血管の描出能の劣化がみられた。また、FSE法によるT2強調画像では、症例にかかわらず正常肺ではほとんど解析可能な画像は得られなかった。間質性肺病変をもつ症例では、FGE法においてもFSE法によるT2強調画像においても、不均一な信号上昇がみられたが、その内部構造の分離は困難で、また、信号の特徴から組織性状を解析することも困難であった。 2.臨床例の問題点の検討 肺野はプロトン量が少ないことに加えて、肺胞構造の特殊性に起因するsusceptibilityによる信号減少に加えて、呼吸運動の除去が現在のMR撮像では不可能である。したがって、肺野のMR画像はHRCTの空間分解能を越えることは原理的には可能であるが、実際に得られた画像ではHRCTを越える空間分解能は得られなかった。また、T2強調画像での組織性状の解析も行ったが、病変内部に含まれる残存含気量によって、同じ組織像でも異なった信号が得られ、特徴的な変化を捉えることはできなかった。伸展固定標本での画像を考えると、呼吸停止下で得られる新たな高画質肺野画像撮像法の登場が肺野高分解能MR画像には必要と考えられた。
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