我々は、これまでに核磁気共鳴画像において繰り返し時間(TR)及びエコー時間(TE)を短縮するimaging sequenceと造影剤(Gd-DTRA)の静脈内投与により肺の相対的血流の画像化を確立した。今回それを利用して、まず健常ボランティアにGd-DTPAを静脈内ポーラス投与し、その直後より秒単位での動態画像を収集した。その動態画像から肺局所のtime-signal inteisity curveを求め、それをガンマフィッティングすることによりピーク時間、平均通過時間、血液量を求め、肺血流の定量的な解析を試みた。ピーク時間、平均通過時間は肺局所では有意差は認められなかったものの、血液容量は重力影響を受ける背側で増加していることが示された。これらは、従来から他の手法により確認されている結果と一致しており、核磁気共鳴画像を用いても肺血流に関する定量評価の妥当性が示された。更に、ブタの肺塞栓症実験モデルを用いて同様にGd-DTPAを静脈内ボーラス投与し動態画像を収集した。同時にマイクロスフェア-を用いて、肺血流の定量値を算出した。肺血流の定量値と平均通過時間の間にはr=0.79の有意な相関が認められた。これらのことから、核磁気共鳴画像を用いて、定性的評価にとどまらず、肺血流に関する定量的評価の可能性が示された。非侵襲的に患者に被曝させることなく肺血流の定量評価が可能であるということは、種々の肺疾患の診断、治療方針の決定、治療効果の判断に寄与するところは大であると考えられる。
|