1.研究の目的 呼吸器疾患の画像診断の精度を向上させるため、画像と標本の緻密な比較・検討を行った。特にCTと伸展肺標本の比較に留意した。 2.研究の方法 呼吸器と病理の専門医の協力を得て、臨床画像と標本像の整備を行った。臨床画像の中心はCTであり、びまん性肺疾患には拡大高分解能CTを、腫瘍性疾患にはヘリカルCTとそれから得られる3D像をそれぞれ重視した。対象疾患は主に肺癌とびまん性肺疾患である。肺標本から的確な情報を得るために手術への立ち会いは必須であった。肺標本は空気または固定液で伸展させた状態で観察した。標本画像の種類は肉眼像、CT、実体顕微鏡像、組織像であった。本研究では末梢肺組織の観察に威力を発揮する実体顕微鏡像を特に重視した。 3.研究の成果 (1)肺癌:高分化腺癌で見られる胸膜陥入の理解が術野の観察により進んだ。直下に到達した腫瘍により伸展性を失った胸膜は腫瘍と共に胸壁を離れ、その隙間を隣接する肺が埋める所見が確認された。埋める際に胸膜の襞が形成されそれらが集中する傾向が見られた。標本割面の実体顕微鏡観察で見られた肺胞隔壁の肥厚には癌の肺胞壁置換型浸潤に対応した。その部分のCTはスリガラス状態を示した。 (2)胸膜下リンパ管網:空気で伸展された肺標本のCTで胸膜下のリンパ管が描出された。それを3D像で見ると肺表面の大小の亀甲紋様に相当した。この亀甲紋様は正常CTでは見られないが、リンパ路に沿う疾患肺の上中葉間を通る像で見られた. (3)肺気腫:早期の細葉中心性肺気腫の観察に実体顕微鏡が有用であった。標本CTによる肺血管の追跡結果も参考にして気腫巣に関係する小血管は肺動脈であることが確認され、臨床CT解析の有用な所見となった。
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