老化促進モデルマウスにおける酸化的ストレス障害の存在をミトコンドリアDNA欠失をPCRにより検出することにより明らかにするとともにマウス脳からミトコンドリアを単離しその原因部位を特定した。老化促進モデルマウス脳では、生後早期にミトコンドリアDNAに欠失が生じるとともにミトコンドリアにおける呼吸調節比の低下を伴う過剰な酸素消費が観察され、ミトコンドリア電子伝達鎖の低効率かつ異常な亢進がみられた。このことはミトコンドリア障害が生じる以前に電子伝達鎖においてラジカルが発生しやすい状態がありこれが大きな原因となって脳障害を引き起こす可能性が考えられた。 これとは別に、電子伝達障害を検出する診断薬剤であるCu-62-diacetyl-bis(N4-methylthiosemi-carbazone)(Cu-ATSM)による発症前酸化的ストレス診断の可能性が老化促進モデルマウスを用いることにより明らかになったことを土台として、学内倫理委員会の指針を得てCu-62-ATSMによる臨床検討を計画した。まず、正常ボランティアによる検討をポジトロンCTにより行い、その体内動態が、排泄系器官を除いて正常組織には集積しないこと、副作用などの問題がないことを確認した。臨床検討の第一段階として、虚血性疾患および悪性腫瘍患者における検討を行ったところ、不安定狭心症および肺ガンの疾患部位に明らかな集積を見出した。これとは別に、Cu-ATSMの類縁体であるCu-PTSMの脳集積に個体差が大きいことを観察しており、これらの差が神経症状や意識レベルとどのように関連するかを検討することにより新しい痴呆診断あるいは脳機能診断の可能性が明らかになると考えられる。
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