研究課題/領域番号 |
09670931
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増永 慎一郎 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (80238914)
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研究分担者 |
赤星 光彦 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (00027418)
小野 公二 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90122407)
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キーワード | 休止(静止)期細胞 / 急性低酸素細胞分画 / 慢性低酸素細胞分画 / 低温度温熱処置 / Tirapazamine / Nicotinamide / シスプラチン / 195mPt-標識シスプラチン |
研究概要 |
低温度温熱処置は、固形腫瘍内では急性低酸素分画よりも慢性低酸素分画をより著しく酸素化すると考えられ、低温度温熱処置後の経時的なQ細胞とP+Q細胞の低酸素細胞分画の変化から、Q細胞の酸素化は約1週間、P+Q細胞の酸素化は約2日維持する事も明らかになり、臨床上、低温度温熱治療後12時間以内の放射線照射の有用性も示唆された。 シスプラチンを用いた化学療法においては、Q細胞はP+Q細胞より感受性が低いが、大きな慢性低酸素分画を有するQ細胞の増感に低温度温熱処置が有用であり、急性低酸素分画を解除するNicotinamideとの併用も効果的であった。さらには、低酸素細胞に対する毒素であるTirapazamineとの併用もQ細胞の増感という点からは有用と思われた。他方、当実験所で合成された@@S1195m@@E1Pt-標識シスプラチンをEMT6/KU腫瘍に投与したところ、この腫瘍がSCC VII腫瘍に比べて慢性低酸素分画が大きいためか、低温度温熱処置併用によって有意にシスプラチンの取り込み量が増加する事も明らかになった。 他方、TirapazamineのみによるDNA損傷効果はP+Q細胞よりもQ細胞で大きいが、Nicotinamideの併用でこの効果は抑制され、低温度温熱処置併用では増強されることも明らかになった。またP+Q細胞に対する効果については、SCC VII腫瘍に比べて慢性低酸素分画の大きなEMT6/KU腫瘍で顕著であった。 当施設で施行されている中性子捕捉療法においても、低温度温熱処置を中性子捕捉化合物投与時に併用することでQ細胞分画への薬剤分布を多少とも改善し得る可能性も示唆され、さらには、Tirapazamineを中性子捕捉療法時に併用することによって、Q細胞の感受性を高め、硼素中性子捕捉化合物の使用で拡大するP+Q細胞とQ細胞との間の感受性の差を縮小させることができることも示唆された。
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