[背景および目的] MRIによる脳機能の研究は今日まで主としてT2*強調像を用いて行われてきたが、この方法では信号変化の原因は神経賦活に伴うヘモグロビンの酸化状態の変化である。一方新しい撮像法である拡散強調像は水の拡散現象を画像化するものであり、細胞の生理学的変化による水の移動が評価できるため、脳機能画像における新しい手法として応用が期待される。しかしながら現在まで拡散強調像を用いた脳機能画像の報告は殆ど見られない。今回の研究目的は拡散強調MRIの脳機能画像への応用可能性を検討することである。 [対象及び方法](1)客観的かつ簡便な神経賦活法である光刺激を用いた。スクリーン上の画像刺激を用いて、正常ボランティアによる通常の脳機能画像および拡散強調機能画像を1.5テスラ装置にて撮影した。(2)刺激の有無による信号変化を計測し、両撮像法による差を検討した。 [結果]通常の機能画像では視覚野において賦活に伴う信号変化が観察されたが、拡散強調像による機能画像において信号変化は観察されなかった。 [考察] 神経賦活による拡散の増大が文献上推測されているが、今回は信号変化が捉えられなかった。原因として、賦活による血流増加と酸化型ヘモグロビンの増加が信号強度を上昇させるのに対して、拡散の増大は信号を低下させ、両者の効果が相殺しあった可能性があると思われた。 [結語] 拡散強調画像による信号強度変化の観察は困難であり、脳機能画像への応用としては、拡散の増大に伴い信号が上昇するような新しい撮像法が必要であると思われた。
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