研究概要 |
【対象と方法】脳動静脈奇形(AVM)をライナックによる定位手術的照射で治療した8例中,MRSにて経過観察できた4例を対象とした.MR装置は1.5T超伝導装置を用い,MRSはPoint Resolved Spectroscopy法で,撮像条件はTR/TE=2000/30,NEX=128を使用したが,一部の検査ではTE=135または273を使用した.AVM nidusに接した深部白質に関心領域を設定し,正常対側の深部白質にできるだけ同じ大きさの関心領域を設定した. 【結果】4例いずれもnidusの縮小を認め,2例でnidus周囲にT2高信号域が出現したが,出現期間は6ケ月,10ケ月であり次第に増強した.治療後6ケ月後にT2高信号が出現した例では,MRSでは特に異常は認めず,T2高信号出現4ケ月後にNAA/Crの減少とlactateの出現を認めた.しかしCho/CrおよびMyo/Crの有意な変化は認めなかった.他の1例ではT2高信号が10ケ月後に出現したと同時にNAA/Crの減少とlactateの出現を認めた.またT2高信号が出現していない1例でNAA/Crの低下を認めた. 【考察】AVM nidus周囲の深部白質のT2高信号域には,MRSにおいてNAAの低下が認められ,neuronal viability/functionの低下及びneuronal lossを示唆していた.またT2高信号域が出現した部位ではいずれもlactateが検出されているが,lactateは通常嫌気性解糖を示唆するものであり,その機序に関しては今後検討していきたい.興味深い点としては1例で,まだT2高信号域が出現していない時期に,NAAの低下が見られている点で,白質障害の前段階をとらえている可能性があり,今後の経過を見ていきたい.
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