研究概要 |
今年度の研究実績として,血管造影もしくはCTにて造影効果を有さない高分化型肝細胞癌を対象にInterstitial Hyperthermia療法を行った。本年度の計画ではパルス照射5W/5分であったが,さらなる時間短縮のため5W/4分(1200J)の連続照射を2例2病巣に施行した.腫瘍の平均サイズ15mm,平均照射回数2回であった. 結果として,2例とも超音波上,照射開始後30秒後にhyperechoic areaの出現が認められ,同領域は経時的に拡大した.照射終了直後の時点では,hyperechoic areaの最大径は平均で20mmであったが,2例ともに一回の照射で腫瘍全体がhyperechoic areaにならなかったため追加照射を試みた.1例では追加穿刺中に強い痛みを訴えたため追加照射を中止した.直後のCTにて少量の肝被膜下血腫がみられたものの,特に重篤な合併症は認めなかった.他の1例では100J,400Jと2回の追加照射を試みるも腫瘍がhyperechoic areaを呈さず,またレーザーファイバーの先端が超音波上確認できなくなったため中止した.2病巣とも平均3ヶ月後にCT上腫瘍の局所再発が認められ,血管造影上著名な腫瘍濃染像を呈したため,抗腫瘍剤動脈内注入療法を施行した.本臨床研究前に行った家兎を用いた基礎実験では,5W/4分(1200J)の連続照射にて直径約15mmの範囲で肉眼上thermal necrosisが得られ,従って臨床上も1回の治療で15mm以上の壊死領域が期待できるものと思われた.しかし臨床においては,正常肝実質と違い腫瘍および腫瘍周囲の肝血流(肝動脈および門脈血流)により加湿効果が妨げられ,thermal necrosisの範囲はこの実験結果より小さいと考えられた.
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